



海野弘
「装飾空間論 かたちの始源への旅」
美術出版社
1973年11月初版 P323
函にスレ、痛み有•ヤケ若干有
〈装飾〉は、われわれがこの混沌とした世界に向かって歩みだし、それを意味あるものとして空間化しようとする時の最初のアルファベットではないだろうか。装飾するとは世界の肌理をくっきりとまなざしにさし出すことであり、ものの周縁やディテイルのうちに見出す構造は、世界の写像として、地図として、かくされた空間の構造への手がかりを与えてくれるものなのだ。
ー装飾について語られなくなって久しい現在、装飾は単に空間に付加されるものではなく、それ自体空間を形成しうるものであり世界の表現なのではないかというモチーフのもとに、本著は、モダン・デザインが置き忘れて来てしまった〈装飾空間〉をめぐって、そこにくりひろげられるまなざしの旅の楽しさをたどりながら、さまざまな文様とその深さを語り、かたちとは何なのかを探る。〈ものを見ること〉に真摯なすべての人々に送る装飾空間への誘い、装飾入門のための書である。