アニータ・ブルックナー 小野寺健訳
「嘘」晶文社
1994年3月2刷 P343
全体的に若干のヤケ有・小口に一部汚れ有
ロンドンのマンションから50歳の独身女性アナが姿を消した。
母一人子一人、老母につくしてその最期を看取ったアナは、こんどは母の友人で、一人暮らしのマーシュ夫人に献身しようとする。
だが、その古風な誠実が夫人を苛立たせる。
正反対の女を妻にしたのちもアナを思い切れない主治医ハリディ、それぞれの理由で独り身となったマーシュ夫人と娘と息子...。
周囲の人びとにとってアナは、皮肉にも「失踪」してはじめて存在感をもつ。
アナはどこへ?
迷いと矛盾にみちたさまざまな人生を緻密に描いて、作家ブルックナーの成熟をうかがわせる傑作。