


あなたの知らない男が、
あなたの知らない街の、知らない酒場で、
ひとり、酒を飲んでいた。
(海を見たいと思った。けれど彼の街には海がなかった。だから、その街から電車で一時間ほどの、湖のある、知らない街に降り立った)
ビジネスホテルを見つけ、
知らない男は喫煙室を予約した。
部屋に荷物をおろし、近場の酒場でこうしてひとり、酒をかたむける。
夏の夜の風は鈴の音がした。
ひとり歩けば、彼のための海があった。
静かな音の海があった。
「悲しみの色は青と人の言う。」
青年の青さが香る本。
七年前の私に贈りたい、四冊。
中桐雅夫詩集
「会社の人事」晶文社
宮本輝
「星々の悲しみ」文春文庫
西岡英明詩集
「街の中のぼくの風景」木馬詩房
小関智弘エッセイ集2
「鉄を読む」晩聲社